自分方位研究所

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ドッペルゲンガーの銃

倉知 淳 著 「ドッペルゲンガーの銃」

久しぶりの小説読書です。冒険小説は好きでよく読んでいましたが、トリックなど謎解きを扱うミステリーはほとんど読んだことがありませんでした。
本の紹介に、物理的に離れた場所で同時刻に使用された銃の謎というようなことが書いてあったので興味を持ち読んでみました。

本書は、隔月刊電子書籍 別冊文藝春秋に連載されていた2作と書き下ろし2作を合わせて1冊にしたもの。

  • 文豪の蔵  (初出 2017年5月号、7月号、9月号 )
  • ドッペルゲンガーの銃  (初出 2018年1月号、3月号、5月号 )
  • 翼の生えた殺意  (書き下ろし)
  • それから  (書き下ろし)   

最後の「それから」は、前の3つの事件を踏まえての後日談のようなエピローグ。短いです。

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本書の内容ですが、探偵役は、駆出し小説家の女子高生。日々ミステリのネタ、プロット作りに悩んでいる。そして、その兄は、たよりない若手刑事。
ミステリ創作のため、兄の休日に捜査中の事件の現場を案内してもらって、事件関係者へのインタビュー、事件の考察、解決を経て、小説のプロットを完成させ、担当編集者のダメ出しを受ける、というもの。

本書での事件は、時系列的にはつながってはいるものの、全く別モノの事件。どの事件から読んでも謎解きには影響ありません。

 

「文豪の蔵」

昔の文豪が集めた価値のある希少本が大量に収納してある蔵で起こった密室殺人事件。
蔵の扉は大きな南京錠で施錠されており、他に出入りできる扉は無し。
老学者の他に3人のメンバとともに蔵の蔵書の整理をしていくことになったが、ある日、その内の一人が蔵の中で死体となって発見される。発見者は、老学者とメンバ二人。

南京錠の鍵は蔵の管理者である老学者が、肌身離さず身に付けている。南京錠のスペアキーは無く、鍵を持っているのは老学者ひとり。

警察の調べでも事件が起きるまでこの鍵を持っていたのは自分一人だといい、実際そのようだが、では犯人はどうやって蔵に入ることができたのか・・・

 

「ドッペルゲンガーの銃」

目出し帽をすっぽりとかぶった強盗がコンビニに押し入り、威嚇のため拳銃を天井にむけて発砲。現金を奪い逃走。
その同時刻に、そのコンビニからクルマで2時間ほど離れた場所で殺人事件が発生。犯人は目出し帽で顔を隠し、コンビニ強盗と服装は同じだったという。また、その後の調査で、二つの現場で使用された弾丸は、同一の銃から発射されたものとわかった。同じ銃が二つ存在していた? この謎は・・・?

 

「翼の生えた殺意」

東京に雪が降った翌朝。裕福な老人が、自宅の庭の離れの茶室で首をっているのが発見された。

雪に残った離れへの足跡は、首をくくった老人のはきものの跡と、第一発見者である長男の車椅子の車輪の跡。長男は足が不自由で車椅子を使用している。
老人には息子が3人おり、昨夜は別居している2人の息子も呼び、親子4人で食事を取った。食事後、長男を除く二人の弟たちはそれぞれの家に帰宅したという。そして、その翌朝、車椅子の長男が首をっている父親を発見。
履物の跡が雪にはっきりと残っていることから、父親が離れに向かったのは雪がやんだ朝方である。母屋と離れは10メートル以上離れており、かつロープをつたっての移動はできないようだ。犯人の足跡はどうしたのだろう?

 

三つの事件。謎解きは面白く、自分でもトリックあばきを考えてみましたが、三つとも降参。最後の種あかしで、なるほどと感心する始末。

トリックは誰が解決したって問題無し!(この意味は読んでからのお楽しみ)

 

犯行の動機については「たぶん、こういうことなのではないのか」とトリックを見破ったときに語られるだけで、実際の犯人から犯行動機が明かされるわけではありませんでした。
この手のトリックを扱う小説では、トリックそのものの謎解きが大事なのであって、それに付随する登場人物の生き方、犯罪を実行するに至った経緯などは省略してよし、ということになっているのでしょうか?
謎解きモノは私自身は超初心者なのでそんな疑問が出てきました。

頭の体操にはよかったと思います。
トリックの謎解きは面白いですね。今後はクイズ形式の推理問題集的なものも読んでみたいと思います。