自分方位研究所

日々の活動記録

食あれば楽あり

日経新聞 毎週月曜日の夕刊に掲載されている小泉武夫の「食(く)あれば楽あり」が面白い。
毎回、様々な料理を自分で調理し、そして食べ始めから食べ終わるまでを実況解説する、その様子がなんとユーモアたっぷりで、しかも分かりやすい。読んでいるだけで、その料理の匂いが新聞誌面から匂い立ってきそうなのだ。自炊する井之頭五郎といった感じか。

表題の食を「く」と読ませる。日経新聞連載の表題には「食あれば楽あり」と書いてあり、食を「く」と読ませるのを知ったのは、著書の文庫本を見てから。

ウィキペディアによると、日経新聞連載は1994年4月からだという。一体、どれだけのレパートリーがあるのだ。
自身でいつも作る料理もあれば、旅先で出会った料理を自分で再現するということもある。大体はは庶民的な料理で、食材はスーパーに行けば手に入るものがほとんど。

先ず、用意する食材と、その調理法が手際よく説明される。同じメインの食材を使って別の料理を紹介するのも毎度のこと。

自身のことを「我が輩」「発酵仮面」と言い、調理する厨房は「食魔亭」と呼んでいる。
面白いのは、そのできた料理を食べる描写。とにかく臨場感にあふれており、作った料理が作者の口に運ばれてから胃袋に収まるまでを、独特の言い回しを使って説明してくれるのだ。
以下の言い回しは大体毎回出てくる。

「箸で取って口に運んで食べた」
「かんだ瞬間」
「甘じょっぱみ」
「匂いが鼻から抜けてきて」
「ご飯の耽美な甘み」
「はやしたて」
「ホコホコ」「ポクポク」「ペナペナとしたコク」
「濃厚なうまみ」「ジュルジュル、チュルチュルと湧きだして」
「包み込む」
「ペロリ」
「味覚極楽」
「腰をぬかすほどおいしい」
「胃袋にすっ飛んでいく」
そしてどんぶりモノを食べたときなどは「丼はきれいに底をさらけ出して恥ずかしがっていた」となる。

著者は1943年8月生まれ。発酵学者で、東京農業大学名誉教授であらせられる。食に関する著作は1980年代前半からコンスタントに発表しておられ、その総数は100冊を軽く超えるのだそう。

毎週月曜の日経夕刊が楽しみ。これからも連載がずっと続きますように。